日本バイオインフォマティクス学会 2020年年会 第9回生命医薬情報学連合大会(IBMP2020)

日本バイオインフォマティクス学会・日本オミックス医学会 合同シンポジウム

合同シンポジウム詳細

  • タイトル
    COVID-19の疫学解析から見えてきた課題とバイオインフォマティクスへの期待
    講演者名
    東北大学 押谷 仁
  • タイトル
    ドラッグリポジショニングに基づくCOVID-19治療薬のインシリコ創薬支援
    講演者名
    産業技術総合研究所 広川貴次
  • タイトル
    COVID-19と将来の感染症に向き合うシミュレーションと機械学習基盤
    講演者名
    東京工業大学 関嶋 政和
    要旨
    新薬は研究、開発、臨床試験を経て上市されるまでに12~14年もの期間と3000億円もの費用がかかると言われており、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のような新興感染症について、急に新薬を創出することは困難である。そこで、リポジショニングと呼ばれる既存薬の転用が考えられるが、リポジショニングにもリガンドベースや構造ベースの手法が考えられる。本発表では、これらリポジショニングを支えるシミュレーションや機械学習を用いたバイオインフォマティクスの議論を行うと共に、今後、どのような研究が必要とされていくかについて考えていきたい。
  • タイトル
    COVID-19伝搬速度における気候の役割:地理空間データ分析
    講演者名
    九州工業大学 竹本 和広
    要旨
    全世界で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が問題となっている。COVID-19の伝播速度と関連する環境要因を推定することは、流行の遅延や感染爆発の抑制の点において重要である。インフルエンザウイルス感染症のように、高温多湿がCOVID-19の伝染率を減少させる可能性が示唆されているが、この推測についてはいくつかの例外が確認されているため、より詳細な検討が必要である。そこで本研究では、COVID-19の感染者数の全球規模時系列データセットと全球規模気候データベースを用いて、COVID-19の伝播速度と関連する気候パラメータを空間解析によって統計的にコントロールしながら推定した。結果として、COVID-19の伝播速度は気温の上昇とともに低下することが確認された。しかし、気温よりもむしろ降水量の季節性や温暖化速度の影響を受けていることがわかった。特に降水量の季節変動性が高く、温暖化速度が低い場合、伝播速度が低下することが確認された。これらの気候パラメータの影響は人口密度や生活の質、渡航規制とは無関係であった。ただ、COVID-19の流行に伴って各国が行った渡航規制は、気候パラメータよりも大きく伝染率の減少に影響することが確認された。データ解析には限界があるため、本研究で得られた知見は予備的なものであるが、COVID-19の流行を予測する際に役立つ可能性がある。