会長挨拶
AI・ビッグデータ時代の生命医薬学を主導する
バイオインフォマティクスを目指して。
日本バイオインフォマティクス学会 会長
山西 芳裕
2023年4月3日
2023年4月から、日本バイオインフォマティクス学会(JSBi)の会長に就任いたしました。バイオインフォマティクスは学術的にも社会的にも年々重要性が増しており、本学会はバイオインフォマティクス分野の中心的なコミュニティになります。その中で、JSBiの会長職を引き継ぐことになり、大きな責任を感じております。これまでの会長の岩崎先生や五斗先生の基本的な路線は維持しつつ、より一層の発展ができるよう、微力ながら尽力していきたいと考えています。
第1に、当然ながら、JSBiの会員の皆様にメリットを感じてもらえる学会を目指したいと考えております。お金を払って会員になっていただいている皆様に、所属することの特典を提供することは学会の責務だと感じています。会員の皆様の研究教育活動に役立つ情報を提供できるように、バイオインフォマティクスに関する最近の成果や動向にアクセスしやすい環境づくりに努めたいと考えています。例えば数年前から始まったJSBi Bioinformatics Reviewは若手中心に進めてくれていますが、これまでバイオインフォマティクスに関わりのなかった研究者に興味を持ってもらうきっかけにもなっており、バイオインフォマティクスの研究者でも新たな研究テーマに参入するときに日本語による解説は非常に有用ですので、そのようなコンテンツの拡充を後押ししていきたいと考えています。おかげさまでJSBiの会員数は増加傾向にありますが、JSBiに新しく入会していただいた方の期待を裏切らないように、これまでの会員と新しい会員の両者にとって役立つサービスの提供や更に活性化する方策などを皆様のご意見も伺いながら出していければと考えています。また、正会員や学生会員だけでなく、賛助会員の企業様にも満足していただける学会にしたいので、企業の視点からのご意見も伺いながら学会運営を展開していければと考えています。
第2に、会員の皆様が交流しやすい学会を目指したいと考えております。そのためにも年会は一番重要なイベントになります。近年のバイオインフォマティクスが関わる研究領域は、生命科学だけでなく、医学、薬学、化学、農学、環境学、数理科学、情報科学など様々な領域へと及んでいます。医薬生命情報学連合大会として年会を毎年開催していますが、研究領域の広がりを踏まえ、より一層様々な分野の研究者に参加していただけるような年会にできればと思います。賛否両論あるかもしれませんが、私は国内学会は交流の場という側面が大きいと考えています。研究や教育に関する情報交換、win-winの関係になる共同研究パートナーを見つけるなど、会員の皆様が交流しやすい場を提供していきたいと考えています。コロナ禍の影響で、この数年間は年会はオンラインでしたが、昨年度(2022年度)の年会は久しぶりに対面で行われ、対面の良さを再認識する年会となりました。特に、ポスターセッションで、熱気を凄く感じました。最近ではオンライン会議にも慣れてきつつありますが、やはり直接顔を合わせて議論することは何物にも代えがたいものです。その年の大会長とも連携しながら、関連分野や分野外の研究者にも興味を持って参加してもらえるような企画やセッションの充実を図りたいと思います。また若手支援で計画している後藤修先生の基金の規程を整備し、若手研究者の年会参加のサポートに向けた運用も進めて参ります。会員の皆様も、ワークショップのご提案、口頭発表やポスター発表の申し込みなど、ご協力いただけると幸いです。
第3に、学会運営の安定化や年会開催の円滑化のための体制作りを考えております。これまでの学会運営は、幹事の先生や事務局のスタッフの献身的なエフォートに支えられているところが大きいと思います。学会運営に必須の情報を複数人で共有してバックアップするような体制構築ができないか検討したいと考えています。またこれまでの年会開催は、大会長を務める先生やその研究室メンバーにとって大きな負担になっていました。私も2020年度に年会の大会長を努めた時に非常に苦労しました。経験がなくても年会開催の準備や運営を問題なく行えるように、業務内容を分かりやすく文書化して整備し、大会長になった人が困らないように、年会業務の引き継ぎを円滑化するための体制やルールを構築していきたいと考えています。
これらの点は幹事・理事を始め会員の皆様のご協力なくしてはできないことです。気づいたことや改善点のアイデアなどがありましたら、皆様の声を遠慮なく届けていただけると幸いです。これから2年間、JSBiの発展に尽力して参ります。どうぞよろしくお願いいたします。
2025.3.31掲載
2023-2024年度学会長より退任のご挨拶
日本バイオインフォマティクス学会会員の皆様
2023年4月より会長に着任し、この3月で2年間の任期を終えることになりました。任期中は、学会の様々な活動に対して多大なご支援をいただき、感謝申し上げます。
着任当初、会員の皆様が交流しやすい学会を目指したいと考えていました。そのためにも年会は一番重要なイベントになります。2023年のJSBi年会は、「人工知能技術(AI)とバイオインフォマティクス(BI)融合によりがん医療インフォマティクス(CI)へ繋ぐ未来」というテーマで、千葉県柏市で開催されました。参加者は合計736名の盛会となりました。久しぶりに対面での懇親会も催され、直接顔を合わせて親睦を深める学会の良さを改めて感じた人も多かったかと思います。懇親会は初めての人同士が知り合える工夫が散りばめられており、ネットワーキングに関する参加者の満足度も高かったようです。大会長を務められた鈴木穣先生、実行委員長の山下理宇先生を始め、関係者の皆様に深く感謝いたします。
2024年のJSBi年会は国際会議として、「1st Asia & Pacific Bioinformatics Joint Conference (APBJC2024)」が沖縄県那覇市にて開催されました。ISCB、APBioNET、APBC、AASBi/GIW、BioClues、GOBLETなど海外の組織との共同開催になります。世界中から720人の参加があり、盛会となりました(現地参加646人、オンライン参加74人)。50件以上の口頭発表、400件以上のポスター発表があり、研究者間の議論では熱気を凄く感じました。日本主導でこのような国際会議を成功に導くことができたのは非常に大きな意義があると思います。大会長を務められた五斗進先生、木下聖子先生を始め、関係者の皆様に深く感謝いたします。2025年度は名古屋で9月3日〜5日に開催されます(大会長:白井剛先生)。詳細は現在最終調整中ですが、ぜひご予定下さい。
若手支援の一環として、APBJCではtravel fellowshipを設立し、JSBi会員限定で、APBJCで発表する14人の学生やポスドクの支援を実施しました(1人あたり最大7万5千円)。JSBiの会員である特典を実感していただけると幸いです。また後藤修先生に寄付していただいた基金を活用し、毎年の年会で優秀発表賞を「後藤修賞」という形で若手研究者に授与することになりました。前会長の五斗進先生が規約の土台を作成して下さり、実際に2023年の年会から運用を開始しました。年会での口頭発表、ポスター発表、ハイライトトラック発表が対象になりますので、ぜひ今後の年会で積極的に演題登録していただければ幸いです。受賞者の声については、JSBiニュースレターをご覧ください。バイオインフォマティクス分野に貢献している若手研究者を讃えるOxford Journals - JSBi Prizeも継続して行っております。Oxford Journals – JSBi Prizeの募集は年度明けに行いますので、奮ってご応募下さい。
また育児中の研究者を支援するため、ダイバーシティ推進のために利用できる予算を確保し、年会実行委員会だけに任せるのではなく学会本部として支援する方向性を打ち立てました。年会で託児所を設置や保育費の補助などを行うことにより、育児中の研究者・研究支援者の年会参加を促し、次世代を担うバイオインフォマティクス研究者のキャリアが途絶えないようにするのが目的です。支援案の作成については、ダイバーシティ推進幹事の松前ひろみ先生や前任者の武藤愛先生にご尽力いただき、また多くの先生方との議論により具体的な方針が固まりました。ご協力いただいた関係者の皆様に深く感謝いたします。
これまでのJSBi会長が築き上げてくれた学会体制のおかげもあり、JSBiは着実に成長しています。会員数も増え1000人の大台を突破し、1200人に迫る勢いです。バイオインフォマティクス研究の重要性が広く認識されていることの表れであり、非常に嬉しく思っております。
この2年間いろいろな困難に直面したのですが、何とか乗り越えることができ、学会運営することができました。学会運営を支えてくれてきた理事・幹事の先生方、事務局の齊藤友紀さんには大変お世話になり、深く感謝しております。一方で、年会開催の負担軽減や事務局の安定化など積み残した課題も多くあります。これらについては力不足をお詫びするとともに、2025年度からの会長である浜田道昭先生に託したいと思います。
最後になりましたが、学会員の皆様に改めて感謝申し上げますとともに、引き続き学会活動へのご支援・ご協力をいただければ幸いです。
2023年度-2024年度 日本バイオインフォマティクス学会会長
山西 芳裕